DesignOpsのROI:DesignOpsのインパクトを定量化するために知っておくべきこと
管理職が問題を解決し、ステークホルダーから賛同を得るには、DesignOpsの影響を定量的に把握することが不可欠ですが、どのようにDesignOpsを測定するのでしょうか?また、どうすればどのメトリクスと方法論を使うべきかわかるのでしょうか。
この記事は、2021年12月にUXPinが主催したパトリツィア・ベルティーニ氏のウェビナー「Measuring DesignOps Impact」を要約したものです。その中でパトリツィアは、DesignOpsがデザインやビジネス価値、そして企業に与える影響を見積もることについての貴重な見解を語っています。
バビロン社のアソシエイトデザインオペレーションディレクターであるパトリツィア・ベルティーニ氏は「DesignOps とは現実を変えることなので、現状やあらゆる取り組みの影響を測る作業は欠かせません。それは誰にとっても重要であり、DesignOpsの実践を成功させるためにも重要なことです。」と述べています。
DesignOpsの非効率性を解決する鍵の1つは、正しいツールを取り入れることです。 UXPinを使うと以下のことを可能にします。
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それでは本題に入っていきます。
DesignOpsのROIの追跡が重要な理由
イギリスの大手割引会社であるVoucherclubが2020年に行った調査によると、イギリスの平均的な会社員の生産性は、1営業日あたり2時間53分しかないとのことです。
アメリカのKorn Ferryが2019年に行った調査では、回答者の67%が「会議・通話に時間をかけすぎている」と答え、34%が「不毛な会議に1日2~5時間費やしている」と回答しているのです。
では、納期を守るためにデザインチームに残業代を支払わなければならなかった時のことを考えてみてください。もし、デザイナーの生産性がもっと高ければ、残業代や納期遅れのコストは削減されるのではないでしょうか?
企業は、デザイナーを管理業務や、(会議の生産性の有無に関わらず)会議室の椅子の温め係に雇っているのではありません。デザイナーは自分の得意なこと、つまりデザインをしなければならないのです。
DesignOpsは、このようなデザインにまつわる非効率性を解消し、より生産性の高いデザイナーを生み出すことを目指しています。問題は、目には見えない多くの非効率性が、デザインチームの生産性に目に見えて影響を与えていることです。 以下は、非効率の原因と効果の例です。
原因:
- 一貫性のないエンドツーエンドのワークフロー
- 部門を超えたコラボレーションが不十分
- 一貫性のないツールの使用
- 一貫性のないテンプレート
- プロセスの欠如
- 不適切なエンゲージメントモデル
効果:
- 長時間労働
- 高い手直し率
- 遅延
- 劣悪な成果物の品質
- チームの高い離職率
- 低い積極性
DesignOpsが効果的かどうかを判断する唯一の方法は、KPIとメトリクスの使用であり、これによってステークホルダーは、DesignOpsの影響を定量化して、DesignOpsとUX全体に対するROI(投資対効果)を測りたいと考えています。
DesignOpsのROIの測定のための正しいメトリクスの選び方
DesignOpsのマネージャーは、デザインチームのパフォーマンスと行動を測定する、内部へ向けたメトリクスを使います。このような運用面によって、マネージャーはワークフロー、デザインプロセス、およびプロジェクトの実行を通じてチームが生み出す影響を評価することができます.
問題の確定:有効性 vs. 効率性
DesignOpsの測定方法を選択する際に、有効性と効率性は別々の方法で評価されることから、この2つの違いを認識することが不可欠です。 有効性とは行動、つまり正しい行動についてです。定性的な結果が出ますが、だいたい主観的です。有効性のメトリクスの例としては、以下のようなものがあります。
- 共感と継続的なユーザーとの関わり
- アイデアと実験のサイクルタイム
- チームのスキル構成(スキルマトリックス)
- デザインスキルの分布
- 部門を超えたパートナーによるデザインの価値認識
- デザイナーの満足度と定着率
一方、効率性は、数字、パーセンテージ、比率を使って測定し、定量化することができます。プロセスや物事を正しく行うことが重要であり、基準値または現状維持の指標を設定し、その指標に対するDesignOpsの影響を測定することができます。 効率性を測る例としては、以下のようなものがあります。
- ツールのROI(コスト/関わり/適用)
- テストとプロトタイプのリードタイム(時間)
- 品質レビューの回数と種類
- チームの生産性(リソースの利用率)
- エンド・ツー・エンドのデリバリーの時間 (時間)
問題を確定する際に重要なことは、DesignOpsを測定するための定性的および定量的なデータを得ることです。効率性の測定は、原因と結果を明確に把握することができるため、極めて重要です。
改善点を明確にする3ステップ
DesignOpsにおける改善領域の確定は、デザイン思考プロセスに従うようなものです。パトリツィア・ベルティーニ氏は、ユーザーを特定し、2つの三角形で改善点を見出します。
まず、メインユーザーを知り、確定する必要があります。どのような体験が最大のペインポイントなのか?最初の三角形には、以下の3つがあります:
- ビジネス
- デザインチーム
- デザインリーダー
問題を特定する際には、その問題がこの3つの主要なステークホルダーグループにどのような影響を与えるかを認識しなければいけません。DesignOpsは、この3つすべてを満足させる方法を見出す必要のある、バランスを取るための作業なのです。 第二段階は、関係性のある側面の確定です。どのような点を改善すれば、効率性に影響を与え、パフォーマンスを向上させることができるでしょうか?2つ目の三角形では、次のようになります。
- 質
- コスト
- 時間
最後のステップでは、各ユーザーの介入可能な領域3つの中でインパクトを与えます。 例えば、デザインチームが手直しに多くの時間を費やしていることに不満を抱いているとします。まず、この手直しの時間がビジネスにどれだけの損失を与えているかを調べます。すると、手直し率が28%であることがわかります。つまり、すべてのプロジェクトに本来かかるべきコストの3分の1以上がかかっていることになります。その結果、余分な仕事が発生し、離職率が高くなるのです。 パトリツィア氏の3ステップの方法論は、DesignOpsマネージャーがデザインの問題とそのビジネスへの影響を特定するのに有効な方法です。
DesignOpsの影響を定量化する際に考慮すべき4点
パトリツィア・ベルティーニ氏は、無料ウェビナー「Measuring Design Impact」で、DesignOpsの影響を定量化する際のDesignOpsマネージャーが考慮すべき重要なポイントを4つ紹介しています。
1) どんなデザインチームにも非効率性がある
目に見えない非効率性があることを認識することが、効率化への第一歩です。つまりDesignOpsマネージャーは、デザイナーやステークホルダーと話をして、解決すべき問題を探さなければいけません。
2) 非効率な部分はコンスタントに変化する
問題を解決するときは必ず原因と結果があります。非効率と効率は広範囲にわたることがあり、例えばある分野で問題が解決されると、他の分野でも問題が発生するといった傾向があります。逆もまた然りで、より効率的なものを作れば、効率性は広がっていきます。 DesignOpsマネージャーは、システム思考を適用してデザインの全体像を把握し、効率と非効率が発生したときにその伝播状況を特定できなければいけません。
3) 非効率性の測定と明確なメトリクスの確定
もし、非効率性や影響度を測れなければ、まだ問題の枠組みが適切にされていないということになります。 時間はかかりますが、全てはきちんとした問題の枠組みと、ステークホルダーからの賛同の獲得やDesignOpsがチームの他のメンバーに与える影響を証明するのに役立つメトリクスの特定なのです。
4) DesignOpsには他の協力が必要
DesignOpsは部門を超えての交流です。問題を解決するには、他の協力が必要です。デザイン作業には部門を超えての交流や連携があるため、デザインチームの非効率性が解決されれば、組織全体の効率性が生み出されることになります。 この連鎖を利用して、他の協力の構築や、ビジネス全体におけるデザインの影響を最大化します。そうすることで、他の部門からDesignOpsの効率化につながる定量的なデータを探し出すことを目指します。
まとめ
DesignOpsが生み出す効率性の影響を測ることは、マネージャーがステークホルダーにこの価値を提示できるということから非常に重要です。
効率性のみが、数字、パーセント、比率としてステークホルダーに提示できる定量的なデータを生み出すので、DesignOpsマネージャーは、問題を特定する際に有効性と効率性の違いを理解しておかなければいけません。
最後に、DesignOpsというのは、問題解決のための連携と協力を見つけるのが鍵です。DesignOpsマネージャーは、UXの枠を超えてこのような協力を形成し、デザインが組織の他の部分で効率性を生み出す方法を特定する必要があります。
無料ウェビナー&参考資料
この記事は、UXPinがBabylonのアソシエイトデザインオペレーションディレクターであるパトリツィア・ベルティーニ氏と行った「Measuring DesignOps Impact」に関するウェビナーから重要なポイントをいくつか要約したものです。パトリツィアが豊富な知識とDesignOpsマネージャーのための実用的なヒントをシェアする1時間のウェビナーをぜひご覧ください。
次のウェビナーとして、2022年1月18日に「Defending Your Design System」と題したライブセミナーを開催しました。基調講演は、IKEAのデザインシステムの導入を支援したカローラ・カッサーロ氏で、テーマは「ステークホルダーにデザインシステムの価値を理解してもらう」でした。
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- DesignOpsとは?
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