UXのティッピングポイント – ユーザーゴール と ビジネスゴール
組織と製品の成功に導くためにも、「ユーザー」と「ビジネス」2つの目標において、適切な目標内容とそのバランスを取ることは極めて重要です。双方にメリットのあるソリューションを提供するために、製品チームは企業の戦略目標を達成し、ユーザーの目的や欲求、課題について考慮しなければいけません。
そこで本記事では、「ユーザーゴール」と「ビジネスゴール」2つの違いについて解説し、それぞれの目標内容を見ていきます。また、AirbnbとSpotifyの成功例も合わせてご紹介します。
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ユーザーゴール と ビジネスゴールのちがい
ユーザーゴール
ユーザーゴールとは、ユーザーが製品を使用する際に達成したい、満足させたい、解決したい目的、願望、問題のことです。ユーザーゴールを理解して優先順位をつけることで、デザイン思考の核となる原理である「使いやすく」「機能的」で「楽しい」製品となります。
ビジネスゴール
ビジネスゴールとは、企業が製品やサービスを通じて達成しようとする目標のことであり、収益の増加、市場シェアの拡大、ブランドの評判の向上などが挙げられます。
ユーザーゴールとKPIの把握
ユーザーゴールは、製品の種類やターゲット層によって異なりますが、ここでは一般的なユーザーゴールと、組織がその追跡に使うKPIをいくつかご紹介します。
効率性
ユーザーは、最小限の労力で効率的にタスクを完了させたいと思うものです。なので製品は、ユーザーがタスクを完了して目標を達成するまでの時間を短縮するのにプロセスが効率化されないといけません。
「効率化」のKPI:
- タスク完了時間
- タスクに完了に必要なクリック数/ステップ数/インタラクション数
使いやすさ
ユーザーは、わかりやすく、習得しやすく、操作しやすい製品を求めていることから、シンプルなナビゲーションと親切なガイダンスを備えた直感的な製品だと、UX(ユーザーエクスペリエンス)が向上します。
「使いやすさ」のKPI:
アクセシビリティ
デザイナーは、多様なユーザーや能力に対応した製品体験の提供が必要であり、調整可能なフォントサイズ、代替入力方法、スクリーンリーダーとの互換性などの機能は、インクルーシブなUX(ユーザーエクスペリエンス) の提供には不可欠です。
「アクセシビリティ」のKPI:
- アクセシビリティのチェックリストによる適合度
パーソナライゼーション(個別化)
パーソナライゼーションは、個人のニーズや好みに合わせてコンテンツや機能をカスタマイズして製品体験を上げるものであり、そのニーズを満たすことで、楽しささ、継続性、そしてその “いい体験” が提供される可能性が上がります。
「パーソナライゼーション」のKPI:
- 設定をカスタマイズしているユーザーの割合
- カスタマイズ可能な数
- 活用されたカスタマイズの数
信頼性
ユーザーは、製品に対してエラーのない安定性のある動作を好みます。特に、無料ではない場合はなおさらです。なのでユーザーの信頼と満足感の維持には、製品はエラーや不具合、性能上の問題がなく、正しく機能するものでないといけません。
「信頼性」のKPI:
- クラッシュ、ダウンタイムなどの、技術的な不具合の発生率
- MTBF(Mean Time Between Failure:平均故障間隔)
- MTTR(Mean Time To Repair:平均回復時間)
セキュリティとプライバシー
ユーザーは、組織に対して個人情報やデータの保護を期待しており、強固なセキュリティ対策と透明性の高いプライバシーポリシーを導入することで、ユーザーは自分のデータが保護されていることを確信できます。
「セキュリティとプライバシー」のKPI:
- セキュリティインシデントの発生件数
- データ侵害の件数
- 個人情報保護に関する苦情件数
- 管轄ごとの個人情報保護苦情件数
美観
魅力的で視覚に訴える製品は、CX(顧客体験)を上げ、製品の好感度アップに貢献します。また、優れた美観はブランドのアイデンティティを強化し、製品を競合他社から際立たせてくれます。
「美観」のKPI:
- インタビュー、レビュー、アンケートなどの、デザイン要素に関するユーザーからのフィードバック
楽しさ
ワクワク感、楽しさ、エンターテイメントなどの要素を取り入れることで、商品をより魅力的で楽しいものにすることができます。
「楽しさ」のKPI(エンゲージメントのメトリクス):
- 平均セッション時間
- 継続率(リテンションレート)
- 使用頻度
- NPS(ネットプロモータースコア)
ソーシャルインタラクション
ユーザーは、社会的な交流や、自分の経験を他の人と共有することを求めることが多いことから、ソーシャルな機能を取り入れたり、ユーザーとのコミュニケーションを促したりすることで、製品の魅力が高まります。
「ソーシャルインタラクション」のKPI:
- コメント、いいね!、シェアなどの数
- 1アカウントあたりの平均フォロー数
- 友人への招待状送付数
支援・サポート
アクセスしやすく、迅速なカスタマーサポート、包括的なドキュメントやチュートリアルを提供することで、ユーザーの満足度が上がり、ロイヤリティが構築されます。
「支援・サポート」のKPI:
- カスタマーサポートのチケット数
- カスタマーサポートの対応時間
- チケットの解決率
- サポート交流による満足度スコア
ビジネスゴールと KPI の把握
ビジネスゴールは、事業や業界、組織の戦略的優先順位によって異なりますが、ここでは、プロダクトデザインにおける複数のセクターで見られる、一般的な会社のゴールをご紹介します。
収益成長
多くの企業にとって、売上と収益の向上は主要な目標です。プロダクトデザインチームは、魅力的で機能的、かつ価格の高い製品を作ることで収益の増加に貢献することができ、収益を生み出すインターフェースやユーザーフローを効率化することで、収益の向上を図ることができます。
「収益成長」のKPI:
- 日次/週次/月次/四半期/年次の総売上高
- 収益成長率
- ARPU(1ユーザーあたりの平均収益)
マーケットシェア拡大
マーケットシェアは、業界全体の売上高に占める企業の割合を示すため、製品のメトリクスとして極めて重要です。マーケットシェアを高めるには、組織が多くの要素で競争力を持つことが必要です。例えば、イノベーション、機能、性能、良いUXの提供は製品チームに最も関係の深い要素です。
また、革新的なデザインで製品が差別化され、潜在的な顧客にとってより魅力的なものになり、マーケットシェアの拡大につながります。
「マーケットシェア拡大」のKPI:
顧客獲得
新規顧客の獲得は、ビジネスの成長にとって極めて重要であり、他の多くのビジネスの目的に影響を与えますが、ターゲットとするユーザーのニーズや好みに合わせた製品をデザインすることで、新規ユーザーを獲得し、有料会員にすることができます。
「顧客獲得」のKPI:
- 日次・月次・年次の新規顧客数
- CAC(顧客獲得コスト)
- コンバージョン率(トライアルから有料プランへ、購読者/ユーザーから顧客へ、など。)
顧客維持
長期的な成功には、既存顧客のエンゲージメントと満足度の維持(顧客ライフサイクル)が不可欠です。プロダクトデザインは、ユーザーからのフィードバックの対応、機能に関する要望の実装、UXの継続的な改善によって、顧客維持の向上を実現できます。
「顧客維持」のKPI:
ブランドの評価と認知度
強力で一貫性のあるブランドアイデンティティで、企業は際立ち、消費者の信頼が築かれます。プロダクトデザインは、製品が企業の価値観や美意識、ブランド戦略全般と確実に合致しているようにすることで、ブランドの評価を上げることができます。
「ブランドの評価と認知度」のKPI:
コスト削減
コストは利益に影響します。つまり、給与やボーナス、株主利益が下がるということです。なので企業は、製品開発、製造、またはサポート関連のコストを削減しようとすることがよくあります。
そのようなコストは、効率的なプロダクトデザインであれば以下のような方法で最小化することができます:
- 製品性能の最適化(サーバーコストの削減)
- インプットコストの削減
- ワークフローとプロセスのシンプル化
- 製品の品質向上
- 新作の市場投入までの時間の短縮
- サポートチケットの削減
「コスト削減」のKPI:
- デザイン、プロトタイプ、テストなどのプロダクトデザインのコスト
- プログラミング、サーバー、APIリクエストなどの製品開発コスト
- 運用コスト
- 労働時間・コスト
- 従業員のオンボーディングコスト
スケーラビリティ
特に、成長意欲の高いスタートアップ企業では、需要の増加や新しい市場への進出のために、ビジネスの規模を拡大しなければならないことがよくあります。なのでプロダクトデザインチームは、製品やサポートするリソースが将来のニーズに対応できるよう、スケーラビリティを考慮する必要があります。
「スケーラビリティ」コストにおいてのKPI:
- 新製品リリースの市場投入までの時間
- 負荷や需要が増加した場合のシステム性能
- 新しい市場や顧客セグメントへの製品適応性
イノベーションと差別化
関連性と競争力の維持には、継続的なイノベーションが必要です。製品チームは、新しい技術、製品、アプローチを探求し、イノベーションを推進する上で極めて重要です。
「イノベーションと差別化」においてのKPI:
- リリースされた新機能や製品改良の数
- 研究開発予算のうち、イノベーションに配分される割合
- 特許出願数または業界賞受賞数
法規制の遵守
企業は、製品が関連する法律、規制、および業界標準に確実に準拠しているようにしないといけません。そのため製品チームは、製品、UI、およびプロセスが確実に規制要件を満たしているようにし、例えばカリフォルニア州やヨーロッパのユーザーなど、特定の管轄区域に合わせて必要な調整を行う必要があります。
「規制遵守」のKPI:
- コンプライアンス監査の合格数
- コンプライアンス違反の発生件数
- コンプライアンス違反により発生した罰金または違約金。
環境および社会的責任
多くの企業は、持続可能性や社会的責任への取り組んでいます。特に法律で特定の目標や要件を満たすことが義務付けられている国や州で、このような取り組みを行っています。そのため、製品チームは、e-waste(デジタル廃棄物)の削減、パフォーマンスの最適化(サーバーリクエストの削減)、製品ファイルサイズの縮小によるストレージの最小化などの目標に貢献するといいでしょう。
「環境および社会的責任」のKPI:
- 製品に関連する温室効果ガス排出量の測定と削減
- デザインおよび開発プロセスにおけるエネルギー消費量の測定と削減
- E-wasteの測定と削減
- 製品の社会的インパクトの測定
ビジネスゴール と ユーザーゴール のバランスのとり方
「ビジネスゴール 」と「 ユーザーゴール 」のバランスをとるのは難しく、ユーザーのニーズとビジネスゴールに対応した機能や改善の開発には、継続的な反復が必要です。
そこで、製品チームが適度なバランスを取ることに成功した2社の実例を以下でご紹介します。
例1:Spotify
- ユーザーゴール : ユーザーは、お気に入りの曲やアーティスト、プレイリストに簡単にアクセスでき、パーソナライズされた楽しいリスニング体験を望んでおり、自分の好みに合わせて新しい音楽を発見することも大切にしている」。
- ビジネスゴール :ユーザーベースを拡大し、プレミアム購読と広告による収益を増やすことを目標としており、製品チームは、ストリーミング業界における競争力を維持するために、UI(ユーザーインターフェース)、機能、パフォーマンスを常にアップデートしている。
- 両者のバランスを取るためのアプローチ:『Discover Weekly』 や 『Release Radar』 など、パーソナライズされたプレイリストを生成するアルゴリズムに投資することで、ユーザーとビジネスのゴールに取り組んでいる。このような機能は、ユーザーに合わせた音楽のオススメを提供し、ユーザーがプラットフォームでより多くの時間を過ごすことの促進、広告露出の増大、購読のアップグレード促進をすることで、ユーザーの満足度を高める。また、UXを向上させる機能に焦点を当てながら、収益モデルに対応することで、ユーザーとビジネスのゴールをうまく両立させている。
例2:Airbnb
- ユーザーゴール :ゲストは、シームレスな予約体験、宿泊施設の多様性、ホストとの信頼できるコミュニケーションを望んでいる。
- ビジネスゴール :ホストのネットワーク拡大、予約数の増大、サービス料による収益の獲得を目的としており、信頼できる宿泊施設マーケットプレイスとしての評判を維持したいとも考えている。
- 両者のバランスを取るためのアプローチ:Airbnbは、直感的な UI、強固な検索とフィルタリング機能、ゲストとホスト間の信頼できるメッセージシステムに投資することで、 ユーザーゴール に取り組んでおり、ビジネスゴール達成のために、「Airbnbのホスト向けリソースセンター」など、ホストがリスティングやカスタマーサービスを改善するためのサポートやリソースを提供している。
また、Airbnbはレビューと評価システムを導入することで、ゲストとホストの透明性と信頼性を確保しており、企業の成長と成功には、このような「ユーザーゴール」と「ビジネスゴール」 のバランスが欠かせません。
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