ユーザー分析 – 質の高いインサイトを得る方法
ユーザー分析は、プロジェクトの基礎となる調査をもたらし、デザインチームは、この調査をデザインの決定の指針、機会の特定、ステークホルダーの賛同の獲得、共感の実践、プロジェクトのロードマップの優先順位付けに使用します。
ユーザー分析の構成要素や、結果を組み合わせて実用的なインサイトを作成する方法を理解するのは、ユーザーニーズとビジネスゴールを一致させて、好製品をデザインするのに不可欠です。
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ユーザー分析とは
ユーザー分析は、人間の行動が製品デザインに与える影響を調べます。そしてUXデザイナーは、ユーザーの行動を理解し、デザインの決定を導くのに、定量的・定性的データを使用します。
例えばUXデザイナーがコーヒー注文アプリをデザインする際に、顧客の人口統計、状況、環境、プロセス、飲料を注文するのに使うデバイスを知りたいと考えるように、リサーチチームは、ユーザーがデジタル製品をどのように使用するかを理解するのに、ユーザーフローに基づいたペルソナやユースケースを作成します。
この分析により、デザイナーは、顧客がアプリケーションを通じてコーヒーを注文するのに適した機能をデザインすることができるのです。
ユーザー分析の実施担当者
ユーザー分析を行う担当者またはチームは、組織と製品の成熟度によって異なりますが、UXデザイナー又はUXリサーチャーは通常、初期段階のユーザー分析または製品の再デザインを担当します。
確立された製品のユーザーリサーチは、大抵プロダクト・マネージャー/デザイナー/オーナーが引き継ぎ、共同作業や複雑なユーザビリティ問題の解決にUXデザイナーを参加させます。
さらに読む :プロダクトデザイナーとUXデザイナーの違いや役割の違いについては、こちらの記事をご覧ください。
ユーザー分析を行うべきタイミング
チームがユーザー分析を行う場面は、主に3つあります:
- 新製品のデザイン
- 既存製品の再デザイン
- 既存製品の新機能のデザイン
どのような状況であれ、ユーザー分析はUXのデザインプロセスの初期に行われるのがほとんどです。デザインチームはその結果をもとに、プロジェクトの目標設定やアイデア出し、そしてデザインの決定をします。
ユーザー分析が重要な理由
ユーザー分析では、エンドユーザーのタスクやゴールに関する質問に答え、デザインや開発の意思決定の指針を示します。
この分析により、市場調査で必ずしも特定できるわけではないユーザーの心理状態、ユースケース、環境、使用頻度、競合製品との関わり方などの役割や特性を明らかにすることができます。
理由1:ユーザー分析で思い込みや偏見を排除できる
包括的なユーザー分析を行うというのは、顧客も意思決定に参加できるようなものです。ステークホルダーの指示、偏見、思い込み、社内政治、その他の要因に基づく決定ではなく、チームはユーザー調査を意思決定プロセスの指針としています。
理由2:ユーザー分析でビジネスチャンスが見つかる
ユーザー分析によって、チームは顧客のニーズとビジネス目標を一致させることができ、リサーチャーが改善点、競争力、市場ギャップ、その他の機会を探すのにもユーザー分析が使われます。
ユーザー分析の方法
ユーザー分析の手法は、2つに分類されます:
- 定量的データ:計測可能だが、行動の原因はわからない
- 定性的データ:主観的なデータだが、「なぜ 」が明らかになる可能性がある。
UXデザインでは、どのデータセットも一長一短です。1つのデータセットを使用しても、ストーリーの一部しかわかりません。なのでUXリサーチャーは、ユーザー、競合他社、市場を理解すべく、定量的データと定性的データを組み合わせるのです。
定量的データ
定量的な調査では、数字、時間、比率など、測定可能なデータが得られます。このデータは、分析者が基準値を特定し、何かが上がるか下がるかを測定できるため、比較的簡単に分析することができます。
定量的なデータは、デザイナーやリサーチャーにユーザーの属性を伝え、定性的データと組み合わせて、UXリサーチの重要なツールである「ペルソナ」を作成します。
定性的データ
UXデザインでは、定性的なデータに高い価値を置いています。測定可能なデータは重要ですが、大抵それだけでは 「なぜ 」を説明することができないのです。そこでUXリサーチャーは、定性的データを用いて、問題や機会の根本を理解します。
例えば、Google Analyticsの定量的なデータでは、eコマースのチェックアウトフローの離脱率が高いことがわかります。そこでUXデザイナーがインタビューを行うと、ユーザーはチェックアウトの長いフォームに入力することに苛立ちや負担を感じていることがわかります。
このような定性的データがなければ、チェックアウトフォームを修正するだけではなく、価格や支払い方法、送料に問題があると判断してしまう可能性があります。
ユーザー分析のアーティファクト5つ
リサーチャーやアナリストがユーザー分析を行う際に使うUXアーティファクトには、次のようなものがあります:
- ユーザーペルソナ
- ユーザーストーリー
- ユーザージャーニーマップ
- ユーザーコンテンツマトリックス
- ユーザータスクマトリックス
- タスク分析
1. ユーザーペルソナ
ユーザーペルソナは、UXの調査・分析の基礎となるものです。このUXアーティファクトは、ユーザーの属性、目標、行動、信念を1ページの文書に集約し、架空の名前とプロフィール画像でユーザーグループを代表するものです。
デザインチームと製品チームはペルソナを使用して、人間的なつながりを作り、共感を得やすくします。また、ペルソナは、共感マップ、ユーザー・ジャーニー、ストーリーボード、フローなど、他のUXアーティファクトを開発するための基盤にもなります。
2. ユーザーストーリー
ペルソナは、デザイナーに製品の対象者を明確に示し、ユーザーストーリーは、そのユーザーがどのように製品を使用するであろうかを概説します。このストーリーで、ユーザーがさまざまなタスクをこなす際の環境、モチベーション、状況、考え方を理解できるようになります。
アジャイルコーチであり、Industrial Logicのシニアコンサルタントであるビル・ウェイク氏は、ユーザーストーリーを開発する際に従うべきシンプルなガイドラインを作成しました。彼のユーザーストーリーの方法論は、”INVEST “という頭字語を用いて、1回のイテレーションでビジネスとユーザーに価値をもたらします。
- 独立(Independent):ユーザーストーリーは、他のストーリーに依存しないよう、自己完結している必要がある
- 交渉可能(Negotiable):ユーザーストーリーは柔軟で適応性のあるものにするため、詳細すぎる説明は避ける
- 価値あるもの(Valuable):ユーザーストーリーは、エンドユーザーに価値をもたらすものでなければならない
- 見積もり可能(Estimable):ユーザーストーリーに必要なリソースは見積り可能であるべきである
- 拡張可能(Scalable):ユーザーストーリーを軽量化することで、一定の確度でタスクと優先順位付けを行うことができる
- テスト可能(Testable):ストーリーがいつ完成したかをチームが理解できるように、受け入れ基準を説明する
ユーザーペルソナの曖昧さ解消のために、因果関係に着目してデザインされたフレームワークであるインターコムのジョブストーリもまた、ユーザーストーリーの方法論です。 インターコムによると、ジョブストーリーは実装よりもモチベーションに重点を置いているため、より実用的です。
3. ユーザージャーニーマップ
ユーザーエクスペリエンスマップやカスタマージャーニーマップともいいます。
ユーザーストーリーがモチベーションとコンテクストをもたらすのに対し、ユーザージャーニーマップは、ペルソナがタスクを完了する様子をステップごとに視覚化します。ジャーニーマップで、より価値のあるユーザー体験を生み出すためにデザイナーが最適化することができる、顧客の重要な瞬間が明らかになります。
ここでは、貴重で実用的なユーザージャーニーマップを作成するための4つのヒントをご紹介します:
- 真実を明らかにする:マッピングする体験に関する定量的・定性的データを、ユーザーリサーチで調べましょう。そしてウェブ解析、コールセンターのログ、顧客調査やインタビューなど、さまざまなソースを検討します。さらにユーザーデータを三角測量し、知識のギャップを埋めます。
- コースを描く:エクスペリエンスマップには、レンズ(チームがジャーニーを見る際のペルソナであるレンズ、すべてのチャネルのタッチポイントであるジャーニーモデル、およびマッピングプロセスから得られたデザイン原理とインサイトである結論を含める必要があります。
- ストーリーを語る:ユーザーニーズの始め、中間、終わりを描きましょう。ストーリーに欠かせないインサイトと、「あると便利」なインサイトを明確にします。マップには、すぐに目につくものと、後から身につくもののユーザーニーズの階層がないといけません。
- マップを配布する:会議で発表したり、壁に貼ったり、印刷したりして、チームメンバーやステークホルダーの目に触れるようにします。全員がマップをレンズとして使い、顧客と同じように世界を見ることが目的です。
4. タスク分析
デザイナー、エンジニア、プロダクトマネージャー、そしてステークホルダーは、必ずしも自分が使うとは限らない製品や、馴染みのない業界を構築することがよくあります。タスク分析は、そのような問題を解決するために、インサイトとコンテキストを提供することを目的としています。
タスク分析では、ユーザーがどのようにタスクを完了させるかを調べ、以下のような詳細を確認します:
- マインドセット
- ユーザー環境
- 物理環境とデジタル環境における行動
- タスクの継続時間
- 使用頻度
- タスクの難易度
ユーザーに焦点を当てるユーザーストーリーやジャーニーとは異なり、タスク分析では、ユーザーが完了しなければならないアクティビティを分解します。
5. ユーザータスクマトリックス
複数のペルソナを分析する場合、ユーザータスクマトリックスを使用して、さまざまなタスクとメトリクスを比較することができます。このマトリックスで、タスクを重要な順にランク付けでき、デザイナーはメインの対象者の特定や、価値提案の検証、それに応じた製品ロードマップの優先順位の決定することができます。
以下のPaper Protosの例では、航空券を予約するための7つのタスクと3人のペルソナが表示されています。
このペルソナを比較すると、「旅行経路の検索」がユーザーにとって最も重要なタスクであり、「航空券を予約する前に旅行ガイド(荷物制限)を参照する」は、あるグループにとってのみ重要であることがハッキリわかります。
MailChimpのUXコンサルタントであるステファニー・トロース氏は、ユーザータスクマトリックスに対して、より結合的なアプローチをとっています。彼女のマトリックステクニックでは、行動と動機のコンテキストというレンズを通して見ることで、ペルソナとエクスペリエンスマップのより広いスナップショットがもたらされます。
彼女のユーザーマトリックスはより視覚的で、それによってチームがパターンを識別し、それに応じて優先順位をつけやすくなります。
6. ユーザーコンテンツマトリックス
コンテンツマトリックスは、既存のコンテンツがどのようにユーザーのニーズを満たしているかを可視化し、改善点を見つけ、コンテンツの更新に優先順位をつけるのをサポートします。製品のコンテンツマトリックスを分析することで、余計なコンテンツ、古いコンテンツ、つまらないコンテンツを排除できるのです。
ここでは、コンテンツマトリックスの主なメリットを4つご紹介します:
- 優先順位の鋭い認識:製品にどのようなコンテンツがあるのか(そしてなぜあるのか)を知ることで、ユーザーや製品との関連性や価値に関する質問を形成することができます。
- 運営上の制約への対応:たとえば、「ユーザーは頻繁なアプリのホーム画面の更新が必要だが、そのための技術的なリソースがないことが判明するかもしない」といったように、マトリックスを埋めていくうちに、解決策に対する新たな制約が見つかるかもしれません。コンテンツマトリックスでは、評価を促すことで、「ベストの次」の選択肢を発見し、誤った思い込みで前進することがないようにします。
- 統一言語の開発:コンテンツマトリックスにより、専門用語やスラング、その他の紛らわしい用語を避けながら、トーンと用語の一貫性を維持することができます。
- 正確なスケール感:製品のコンテンツ規模を把握することで、より適切なデザインの判断が可能になります。例えば、100画面と1,000画面のコンテンツを評価する場合、マトリックスによって製品のマトリックスを可視化し、それに応じてリソースの優先順位を決めることができます。
調査結果の優先順位の決め方
ユーザー調査と分析が完了すれば、ユーザーの全体像や、チームが解決しなければならない問題、そしてその優先順位が見えてくるでしょう。
優先順位付けマトリックスによって、チームはデザイン機能を可視化し、「必要」と 「あれば便利 」を分けることができます。多くの場合、チームは圧倒的に長い機能リストを持っており、絞り込みは困難です。
そこで、デザインの目的に優先順位をつけるためのヒントをご紹介します:
- トップタスク分析:適格なユーザーに、簡単に実行できるタスクのランダムリストを渡し、上位5つを選んでもらうことで、ユーザーにとって最も重要なものを特定することができます。
- ギャップ分析:優先順位をつけた機能を、重要度と満足度の高い順に評価してもらい、次に、公式の【重要度+(重要度 ー 満足度)】を使って、機能の優先順位を決定します。
- 狩野モデル:ユーザーに、製品からどの機能がなくなると最も困るかを評価してもらいます。この満足度の差は、「必要な機能」と「あれば便利な機能」を示しています。
- QDF(品質機能の展開):優先順位をつけられた仕事、または上のタスクの分析からの機能のリストから始め、これと会社からの機能のリストを組み合わせます。QFDは、ユーザーの必要性を最もよく満たす機能をランク付けします。
- パレート分析(80/20の法則):この方法は、「必要な機能」と「あれば便利な機能」を素早く区別することができます。例えばトップタスクでの最多投票、最多収益など、機能を高いものから低いものへと並べ替え、合計し、各項目のパーセンテージを計算します。スコアが最も高い機能が、最も重要な機能です。
- 因果関係ダイアグラム:UXの問題は複雑であるため、この分析によって各問題の複数の原因を明らかにし、効果的なトラブルシューティングを可能にします。「なぜ?」と問いかけながら因果関係図を作成し、症状ではなく根本的な原因を明らかにします。
- FMEA(故障モード影響解析):これで、特定のアクションがもたらす悪影響を理解でき、機能の追加ではなく壊れている部分の修正で、製品を改善できるケースを強調することができます。FMEAは、問題の共通性、重大性、難易度に基づいて危険優先度数を算出します。
おすすめの本:The Guide to UX Design Process & Documentation.
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