UXベンチマークガイド – データはどこから取得すべきか?
改善すべき領域の特定や、製品目標の達成にはUXのベンチマークが不可欠であり、デザインチームは、デジタル製品のUX(ユーザーエクスペリエンス)の向上のために、業界標準、競合他社、または過去の実績からの基準値をベンチマークによって得られます。
本記事では、UXベンチマークの概要、関連するベンチマークの見つけ方、ベンチマーク調査を成功させるための3ステップのプロセスについてお話します。
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UXベンチマークとは
UXベンチマークとは、競合他社、業界、過去の実績などの基準に照らして、パ性能を比較評価することであり、目標を設定して性能を測定するためのベースラインまたはベンチマークを特定するのが目的です。
ベンチマークで、「これは良いか悪いか 」というのがわかります。
UXベンチマークの種類
ベンチマークはUXメトリクスと連動しており、以下の2つのカテゴリーに分類されます:
- 定性的データ:感情、ロイヤリティ、使いやすさ、ユーザー満足度、UXなどの主観的なデータ
- 定量的データ:数値や比率などの測定可能なデータ
UXメトリクスの追跡とデータの表示には、さまざまな方法があります。例えば、以下のようにNPS(ネットプロモータースコア)は0~10の規模で、タスクタイムは秒、分、時間を使用します。
- NPSは、ユーザーの感情や満足度を測るため、定性的なメトリクスとなる
- タスク(にかかる)時間は、時間を使って測定できるため、定量的なメトリクスとなる
質的なデータを集める典型的な方法は、アンケートや調査を通じての質問ですが、定量的なデータは、追跡ツールや分析ツールを使って測ることができます。
UXベンチマークが便利な場合
UXベンチマークは、デザインチームが成功か失敗かを測りたいときにはいつでも不可欠であり、その測定は、プロジェクト全体であったり、特定のユーザーインターフェースに適したコンポーネントを選択するときであったりします。
以下は、UXベンチマークが最も活用される場面の一部です:
- UX監査結果の評価
- デザインの最初と最後
- ユーザビリティテストの前後
- 競合ベンチマーキング:競合他社に対するUX KPIの測定
- 業界標準を打破するための目標設定
- 新製品の初期リサーチの一環として
- コンバージョン率、完成度、ユーザーエンゲージメント、eコマースのメトリクスなど、プロジェクトのビジネス目標の確定時
DesignOpsのためのUXベンチマーク
上記の例は、ユーザーと製品のベンチマークのメトリクスに関するものであり、UXベンチマークをDesignOpsの実装者にとって重要な焦点である、部門の業績に適用することもできます。
パトリツィア・ベルティーニ 氏は、「DesignOpsのROI」の中で、効率性を測るためのいくつかの重要なメトリクスについて概説しています:
- ツールのROI(コスト/エンゲージメント/採用率)
- テストやプロトタイプのリードタイム(時間)
- 品質審査の回数と種類
- チームの生産性(リソース活用)
- エンド・ツー・エンドの納期(時間)
このようなメトリクスを測るのに、DesignOpsの実装者には性能を追跡するためのベースライン(ベンチマーク)が必要であり、そのような性能のメトリクスは、デザイン提唱と貴重なリソースの獲得に不可欠です。
UXベンチマークのデータはどこから来るのか
デザイン/チームのリーダーやステークホルダーは、メトリクスの特定やUXの目標設定にベンチマーク調査(総括評価)をよく利用します。そこで筆者たちは、UXベンチマークの4つの主要な情報源を以下のように特定しました:
- 製品データ
- 競合他社分析
- ステークホルダー
- 業界標準
1. 製品データからのUXベンチマーク
製品データは、UXベンチマーク作成のための豊富なインサイトとメトリクスを生成します。製品データを集めるためのツールは数多くありますが、一般的な方法としては以下のようなものがあります:
- Google Analyticsなどの製品分析は、コンバージョン、売上、見込み客、時間ベースのタスクなど、重要なデータとメトリクスを集める
- Hotjar、Crazy Eggなどのヒートマップは、ユーザーがコンテンツをどのように消化し、関わっているかをデザインチームに伝える
- ユーザビリティテストは、タスクの完了率やタスクにかかる時間など、ユーザーのインサイトを集めるのに適しており、デザイナーは、定性的データの収集のために質問をすることもできる
- ユーザー調査には、NPS(ネットプロモータースコア)、CSAT(顧客満足度)、SUS(システムユーザビリティスケール)などのUXメトリクスを導き出すためのアンケートや調査が含まれる
2. 競合他社分析からのUXベンチマーク
UXチームは、競合のベンチマークの作成に競合分析を利用でき、競合と比較して測定することで、競合が優位に立てる部分や、改善が必要な部分を把握することができます。
例えば、Similarwebのようなツールを使えば、Webサイトやアプリケーションを分析・比較することができます。UXチームは、直帰率、平均サイト滞在時間、訪問あたりのページ数など、上位の競合他社のメトリクスを見て、競合の平均を割り出し、これをベンチマークとして使用し、以下のようなことを問うといいでしょう:
- 競合他社は何が優れているのか?
- どのようなデザイン機能がエンゲージメントを生み出しているのか?
- 競合のトラフィックソースは何か?
- 競合の人口構成は?我々は同じようなオーディエンスを共有しているか?
UXの専門家は、これをさらに一歩進めて、競合のユーザビリティテストを実施することができます。ベストな方法は、競合のWebサイトのプロトタイプのレプリカを作ってテストを実施することであり、そのテストの結果で、改善のための有益なインサイトが得られ、競合のユーザビリティベンチマークを設定して競合の一歩先を行くことができるようになります。
3. ステークホルダーからのUXベンチマーク
ステークホルダーは、例えばコンバージョン率の基準値を設定したり、ビジネス目標に沿ったUXベンチマークの設定をよく行います。デザインチームは、製品が確実に顧客の役に立てるように、そういったビジネス目標とユーザーニーズのバランスを取らなければいけません。
結局は、ステークホルダーは、UXとそのプロジェクトのROI(投資対効果)を見たいのであり、次のようなメトリクスに関心がありその改善を見たいのです:
- 売上やコンバージョンの向上
- テクニカルサポートコールの減少
- 顧客ロイヤリティ
- 顧客満足度
- 顧客維持率
- 市場投入までの時間の短縮
- 再加工やエラーの削減
- 従業員の定着
- 人件費の削減
4. 業界標準からのベンチマーク
業界標準のベンチマークは、組織が追いかけ追い越したい KPI です! 企業は、このような業界標準を性能の最低ラインとして使う必要があり、それ以下だと、製品の性能が平均以下であり、顧客の期待に応えられていない可能性があるのです。
組織は、調査機関や業界レポートなどさまざまな情報源からそのようなベンチマークを入手したり、ベンチマーク調査を依頼したりすることができます。
Baymard Instituteの「SaaS UX Benchmark:5 Pitfalls to Avoid」は、SaaS業界を対象とした調査機関のベンチマーク調査の優秀な例です。この調査では、B2BとB2CのSaaS企業10社を分析し、企業がKPIベンチマークとして使用できる複数のカテゴリーにおける255のUX性能のメトリクスを以下のように決定しています:
- UXの全体的な性能
- デスクトップWeb
- ホームページとナビゲーション
- ページの種類とデザイン
- プランのマトリクス
- チェックアウト
- サインアップ&アカウント管理
- サイト全体の機能 & ナビゲーション
- モバイルウェブ
- ホームページ&ナビゲーション
- ページタイプ&デザイン
- チェックアウト
- サインアップ&アカウント管理
- サイト全体のデザインおよびインタラクション
UXベンチマーク調査の実施方法
今回は、ユーザーリサーチアカデミーの創設者であるニッキー・アンダーソン氏から、「ベンチマーク調査の3ステップのテンプレート」を拝借しました。彼女の3つのステップは、次のとおりです:
- 計画の策定
- インタビュースクリプトの策定
- 被験者の選択
1. 計画の策定
ベンチマーク調査の計画で、UXチームはゴールと目的を理解し、次の3つの重要な事項に答えられるようになります:
- ベンチマーク調査の頻度:状況は常に変化するため、確実に自身のベンチマークが常に正確であるように、フォローアップ調査が必要である。
- 何を学びたいのか:明確な目的によって、研究者は正しいUX研究方法を適用し、最終報告書を策定できる。
- 何を測りたいのか?:例えば、「デスクトップとモバイルアプリのタスク完了率を知りたい 」など、機能やKPIについて具体的になっておく。
2. スクリプトの作成
スクリプトは、ユーザーテストの質問とそれに望ましい結果を一致させます。ユーザビリティの被験者に、たとえば「製品を購入する」、「製品のオンボーディングシーケンスを完了する」、「特定の機能を使用する」など、どのようなタスクまたはアクションを完了してもらいたいですか?
あらゆるユーザビリティテストのように、UXモデレーターは、結果に影響を与えたり偏ったりしないように、「5W1H」式の質問の使用が必要です。以下の例を見てみましょう:
- ユーザビリティに欠ける質問の例 :「当店の母の日ギフトは検索できますか?」(できる・できない)
- 客観的で5W1Hを用いたユーザビリティの質問の例:「当店の母の日ギフトをどのように検索しますか?」(検索法)
最初の質問は、ユーザーに検索機能の使用を促すかもしれませんが、2つ目の例では、ユーザーのプロセスや結果はこの質問にあまり影響を受けないと思われます。
3. ユーザビリティの被験者の選択
通常のユーザビリティテストでは、被験者は10人以下ですが、ベンチマーク調査では、より多くのデータが必要です。ニッキーは25人以上を推奨していますが、BaymardとMeasuringUは、それぞれ4,750人と600人のユーザーをテストしました。
被験者の人数は、研究者が行う調査や予算によって異なります。例えば、インタビューは時間と費用がかかるので、Baymardの4,750人よりもニッキーの25人の方がはるかに現実的ですが、大量のユーザーをテストするにはアンケートや調査が適しています。
ニッキーは、定期的にベンチマーク調査を行う際の、ユーザビリティの被験者を選ぶコツを2つ教えてくれました:
- テストするユーザーの種類を統一する
- 毎回同じ被験者を使用しなくていい;新しい被験者と以前の被験者を混ぜることで、新鮮なインサイトが得られる
UXPinによる正確なユーザビリティテスト
多くの場合、ベンチマーク調査にはプロトタイプとテストが必要です。信頼性が高く、実用的なベンチマークを得るには、デザイナーは、最終製品のUXを正確に再現するHi-Fiのプロトタイプを用意しなければいけません。
UXPinのコードベースのプロトタイピングにより、デザイナーは最終製品のような外観と感触のプロトタイプを作成することができ、サインアップフロー、eコマースチェックアウト、フォームバリデーション、コンポーネントの状態、アクセシビリティなどをテストするために、完全に機能するダイナミックなユーザー体験を作成できます。
UXPinでプロトタイピングを次のレベルに引き上げるための4つのコードベース機能をご紹介します:
- ステート:1つの要素やコンポーネントに複数のステートを適用し、それぞれに異なるプロパティ、インタラクション、アニメーションを持たせることができる。
- インタラクション:高度なアニメーションや条件付きインタラクションにより、複雑なインタラクションを作成できる。
- 変数:ユーザーの入力を取得・保存し、その情報を使ってアクションを起こしたり、ユーザー体験を個別化する。
- エクスプレッション:Javascriptのような機能で、フォームの作成、パスワードの検証、ショッピングカートの更新などを行うことができる。
UXベンチマークと製品目標を達成するための実行可能な結果を得るのに、質の高いユーザビリティテストを実施しましょう。無料トライアルにサインアップして、 UXPinがどのようにUXデザインプロセスを強化し、より良いUXを顧客に提供できるのか、ぜひご覧ください。